マスコミの対米追随報道は聞きあきた 日本を主体に報道しよう!

 田中宇の国際ニュース解説 無料版 2009年12月8日 http://tanakanews.com/ より引用。

日本にも米国にも不必要になった沖縄米軍基地

 日本にとって中国が脅威でなくなると、必要性が大幅に低下するものがある。
沖縄の米軍基地である。2005年の日米防衛協議で、沖縄の米軍基地は、
従来からの朝鮮半島有事への備えだけでなく、台湾海峡有事(つまり中国の脅
威)に備えるためにも必要だと宣言された。だが今や、台湾も親中的な国民党
政権であり、米国も中国との協調を重視している。オバマ大統領は先日の訪中
で「米国は、中国を世界有数の大国として尊重する。中国に、大国としての役
割を期待する」と表明した。沖縄の米軍基地は、日本ばかりでなく米国にとっ
ても、すでに不必要である。


 沖縄県民の大多数は、島内の米軍基地を減らしてほしいと思っている。私は
11月8日の普天間基地問題の沖縄県民集会に参加したが、集会の壇上には沖
縄県会議員のほとんど全員が来ていた。自民党公明党は来なかったが、公明
党は壇上ではなく参加者として、創価学会の旗を掲げる人々が来ていた。自民
党は集会に来なかったが、その後、自民党沖縄県連が東京の党本部に対し、普
天間問題で県内移設賛成のままでは今後の選挙に勝てないので、県内移設反対
に転換することを容認してほしいと申し出ている。沖縄では、もはや「基地が
あった方が良い」と主張すると選挙に勝てないのである。


 沖縄には、米軍海兵隊の世界3大拠点の一つ「第3海兵遠征軍」が置かれて
いる(第1と第2は米本土)。海兵隊は、名護市辺野古の海岸や、東村高江な
沖縄本島北部で、急襲上陸やヘリ着陸の訓練を繰り返している。だが、沖縄
の亜熱帯の地域での訓練が適用される南方は、日本の防衛にほとんど関係ない
(思いつくのはフィリピンのミンダナオ島ぐらいだが、ミンダナオのイスラム
組織との戦いは米軍の「やらせ」である)。日本にとって最大の脅威は北朝鮮
だとされるが、米軍海兵隊が日本を守るため有事の際に北朝鮮に上陸急襲する
つもりなら、海兵隊が訓練する場所は亜熱帯の沖縄ではなく、もっと寒い日本
の本州や北海道でやらねばならない。北朝鮮に面した日本海側が望ましい。

http://tanakanews.com/f0223philippines.htm
沖縄からフィリピンのやらせテロ戦争に転じる米軍
 そこで思うのだが、たとえば本州の日本海側で熱烈に親米・親オバマを貫い
ている福井県小浜市に、海兵隊の訓練基地を移転すると良いのではないか。若
狭湾に面する小浜周辺の海岸は入り組んでおり、海兵隊の上陸訓練に適してい
る。沖縄よりずっと海水温や気温が低いので、北朝鮮での実戦環境に近い。小
浜なら、対岸が北朝鮮で近いので、有事になったら海兵隊は訓練を実戦に切り
替え、すぐ北朝鮮を急襲できる。

 沖縄の人々は海兵隊に出ていってほしいが、対照的に小浜市の人々はオバマ
大統領を熱烈に応援しており、オバマに小浜を訪問してもらいたい。小浜市
オバマ訪問を条件に海兵隊の訓練基地になると名乗り出れば、念願のオバマ
小浜訪問が実現する。幸いにも、橋下徹大阪府知事が「関西空港海兵隊
地にしてもよい」と言ったので、関空と小浜が組むことで、沖縄の海兵隊基地
をそっくり代替できる(関空から小浜までは100キロと比較的近い)。嘉手
納の空軍機能も関空神戸空港に移せば、なお機動的だ。経済地盤沈下の関西
には、伊丹の大阪空港があれば十分だろう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091130-00000005-maip-soci
普天間移設 「話あれば関空に」橋下大阪府知事

 以上の移転構想は、関西や小浜の人が強く望んだ場合のみという条件つきで
ある。現実には、米国は、北朝鮮の問題を6カ国協議で、中国主導の外交で解
決していく方針なので、海兵隊北朝鮮を急襲上陸せねばならなくなる可能性
は低い。万が一、日米が北朝鮮と戦争する事態になっても、最初は日米空軍に
よる空爆が行われ、海兵隊の出動が必要になるまで数日かそれ以上の期間があ
るだろうから、海兵隊は日本からでなく、米本土からの出動で十分間に合う。
沖縄だろうが関西だろうが、米軍が日本にいる限り、日本政府は「思いやり予
算」など毎年数千億円を米国に払い続けねばならない。オバマが小浜に来るこ
との見返りに日本国が払う金としては高すぎる。

 米海兵隊が沖縄にいるほとんど唯一の理由は、日本政府が思いやり予算など
巨額の金をくれるからだ。外務省など日本の官僚機構は、冷戦後も日本の対米
従属を維持して自分たちの権力を守るため、金を払って米軍にとどまってもら
った。日本が金を出さなければ、冷戦終結後、米国は財政支出削減のため、第
3海兵遠征軍を米本土に戻し、米本土の第1、第2海兵隊遠征軍と合体してい
たはずだ。

http://tanakanews.com/091115okinawa.htm
日本の官僚支配と沖縄米軍

「タダ飯」を食うために日本にいる第3海兵遠征軍が、有事の際に日本を守る
つもりがあるかどうか疑わしい。そもそも、自国の防衛を外国軍に頼る日本人
は姑息であり、米兵が命をかけて日本を防衛したいと思うはずがない。その点
で、小浜や関西に移っても、米海兵隊は日本の役には立たない。本来、愛国者
は「日本は日本人が守る。米軍ではなく自衛隊が守る。在日米軍には、これま
での駐留を感謝しつつ、米国にお帰りいただこう」と考えるのが自然だが、マ
スコミの対米従属プロパガンダ愛国者の頭の中をねじ曲げている。

▼見えてきた在日米軍追い出しの流れ

 とはいえ「在日米軍には、これまでの駐留を感謝しつつ、米国にお帰りいた
だこう」と考える日本人は、いないわけではない。先日は、日本の首相自身が、
そのような発言を放った。鳩山首相は12月4日に「(沖縄の海兵隊を)グア
ムに全部移設することが、米国の抑止力ということを考えたときに妥当か検討
する必要がある」と述べ、沖縄の海兵隊を全部グアムに移す案を検討している
ことを認めた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091205-00000065-san-pol
普天間交渉「暗礁」 米大使一変、激怒

 ここ数年の米軍再編の中で、第3海兵遠征軍は、司令部がグアムに移り、実
働部隊は沖縄に残る計画になっている。日本政府(官僚機構)が思いやり予算
の延長で「グアム移転費」を負担したいと言ったので、米軍は、海兵隊のグア
ム移転をなるべくゆっくりやり、日本からできるだけ多くの金を引き出そうと
している。日本が金を出したいと言うのだから、財政難の米国が、それならで
きるだけ多くもらおうと思うのは当然だ。

 しかし、日本が米軍引き留めのために金を出す従来の体制は、今夏までの自
民党政権時代に官僚主導で決めたことだ。今の民主党政権は、米国の覇権が低
下し、日本の財政難がひどくなる中で、官僚のために巨額の金を出して米軍を
引き留めるのはやめた方が良いと考えている。だから鳩山政権は、就任前から
「官僚本位の政策はやめる」と言い、官僚機構の中で財務省に権限を集中させ、
小沢一郎らが財務省を握ることで権力を掌握しようとしている。鳩山政権が
社民党も入れた連立政権を組んだのは、社民党の「反基地」の姿勢を使い、連
立内に社民党がいるので基地問題で米国の言いなりになれないと言い訳する理
由をあらかじめ作るためだろう。

 12月4日に鳩山は「沖縄の海兵隊をグアムに全部移設することが、米国の
抑止力を考えたときに妥当か検討する」と言ったが、これは「第3海兵遠征軍
がグアムと沖縄に分かれているのは非効率で、米国の抑止力を削いでいる。沖
縄からグアムへの海兵隊の移転は、自民党時代の日米合意に沿ってゆっくりや
るのではなく、過去の日米合意にこだわらず、早くやった方が米国の抑止力維
持にとって良いのではないか」ということだ。グアム移転を早くやれば、日本
が米国に出す金も少なくてすむ。官僚の権力維持のために米軍のグアム移転を
ゆっくりやって巨額の税金を無駄遣いするのはやめてもいいのではないか、と
いう意味だ。

 米軍は18カ月でイラクから米国に10万人以上の米軍を撤退する計画を立
てたぐらいだから、沖縄からグアムに2万人の海兵隊全部を移すのは半年か
1年で十分やれる。(抑止力の面では、海兵隊遠征軍は出先のグアムではなく
米本土に置けば十分だ。米政府は金欠なので、グアムに海兵隊遠征軍を置く費用
を節約し、第3海兵隊遠征軍を解散して米本土の第1と第2に併合するのでは
ないか)

 グアム移転を一気にやると、日本から米国にあげるお金が減る。だから、米
国のルース駐日大使は、鳩山発言後の日本側との協議の場で、異例の激怒をし
た。しかし、以前の記事に書いた10月のゲーツ国防長官の訪日時の「激怒」
以来、私は、米高官の対日激怒は、長期的に見て日本人が米国の傲慢さに腹を
立てる方向に寄与するので、米国からの自立を目指す鳩山政権に対する、隠れ
多極主義の米中枢からの「応援」ではないかと感じている。

 米政府は「普天間辺野古移転が実現しないなら、海兵隊はグアムに移転せ
ず、永久に沖縄に駐留するぞ」と言い、日本のマスコミはこの論調を増幅して
鳩山を批判している。だが、そもそも米軍の沖縄駐留は金が目当てだから、日
本が思いやり予算などの巨額資金を出すのをやめたら、米軍の方が沖縄から出
ていきたくなる。何度も言うが、沖縄の海兵隊駐留は、すでに日米双方にとっ
戦略的価値がない。あるのは米国にとっての金銭的価値だけで、それも米国
側は、日本の権力内部でのねじれた状況(官僚支配)の結果であり、いずれ終
わると知っていたはずだ。日本のマスコミは「鳩山政権は米国を怒らせる悪い
政権だ」という書き方を続けているが、この傾向が続くと、日本人は「マスコ
ミこそ、傲慢な米国の威を借る悪い狐だ」とマスコミ批判を強める。

 以前の記事に書いたが、普天間基地問題では、時間が経つほど、沖縄県民は
県外国外移設を求めるようになる。10月には「沖縄県民の意志を尊重する。
最後は私が決める」と言い、今回は「グアムも検討対象」と言った鳩山は、沖
縄の民意を使って米軍に出ていってもらおうとしているように見える。沖縄県
民は従来「海兵隊は、県外か国外に移転してくれ」と言っていたが、今回の鳩
山発言を機に、今後は「グアムに移転してくれ」と言うようになるだろう。も
し本当に海兵隊をグアムに撤退させられたら、沖縄県民の自信はさらに高まり、
嘉手納基地もグアムに移ってくれと言い出すだろう。

http://tanakanews.com/091104okinawa.htm
沖縄から覚醒する日本

 鳩山発言に対し、米国側は「普天間問題が解決するまで日本と同盟関係につ
いての協議はしない」と言ってきたが、日米協議の再開が遅れるほど、沖縄は
米軍基地追い出しの決意を強め、日本本土の世論も「在日米軍がいなくても困
らない」という方向になり、マスコミの論調に対する違和感が強まるのではな
いか。

▼ガス抜き踊りをやらされる岡田外相

 鳩山政権でもう一つ興味深いのは、岡田外相の動きである。岡田は、普天間
移設問題について、何とかして米国と沖縄県民の双方が納得する解決法を編み
出そうと、本気で駆け回っている観がある。鳩山や小沢は、最後は在日米軍
全撤退させたいと考えているようだが、岡田はその方針を共有していない。こ
れは何を意味するのか。私の推察は「小沢や鳩山は、外務省のガス抜きのため
に、岡田を外務省を代弁する役回りに置き、あえて解決不能な状況下で、必死
に駆け回らせているのではないか」というものだ。鳩山は岡田に「外務省幹部
とよく相談して、普天間移設の解決策を編み出せ」と命じ、その一方で沖縄県
民や社民党を基地反対の方に煽り、最終的に「外務省は岡田のもとで、できる
だけのことをしたが、在日米軍撤退を止められなかった」という話にするつも
りではないか。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-153830-storytopic-25.html
岡田外相来県 県外一色苦悩濃く

 鳩山政権は、外務省と敵対すると、以前の記事に書いた田中角栄のように、
外務省の手練手管に潰される。対米従属の外交スキャンダルが不倫絡みの情報
漏洩事件にすり替えられた「西山事件」(沖縄密約事件)に象徴されるように、
外務省は話をすり替えつつマスコミを操作し、自分たちに都合の良い結論に
持っていくプロパガンダに長けている。だから小沢や鳩山は、いちずな岡田を
外相に送り込み、外務省のために本気で必死に働かせ、外務省が鳩山政権を敵
視できない状況を作った上で、在日米軍引き留めという外務省の長期戦略を潰
しにかかっている。

http://tanakanews.com/091115okinawa.htm
日本の官僚支配と沖縄米軍

 米国は今春、青森県三沢基地から40機のF16戦闘機をすべて米国に引
き揚げ、代わりに嘉手納基地のF15戦闘機群(50機)の半分を三沢に移転
する話を日本側に持ちかけたが、米軍に出て行ってほしくない日本政府は、こ
の案に反対した。この案を復活させ、嘉手納の空いた場所に普天間のヘリ部隊
を入れれば、普天間を空けられる。だから岡田は「嘉手納移転」にこだわった
が、これについては米国が小沢鳩山に「助け船」を出した。以前は米国から言
い出した話を、今回は米国が拒否した。ゲーツ米国防長官は「嘉手納に空軍戦
闘機と海兵隊ヘリを一緒に常駐するのはダメだ」と強く言い、外務省案を潰し
た。実際には、空軍戦闘機と海兵隊ヘリが一つの基地を共有してコストを削減
する手法は、ここ数年の米軍再編で推奨されてきた柔軟運営策だが、ゲーツは
「ダメ」の一点張りだった。

http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-09-13-M_1-005-1_001.html
[F15削減難色]これが政府の「本心」か

http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091101001075.html
米、三沢基地F16撤収を打診 ことし4月、日本難色で保留

 岡田は、普天間移設問題では外務省のために解決策を探して奔走したが、そ
の一方で「西山事件」(沖縄密約。沖縄返還時の秘密の「思いやり予算」)や
核兵器の日本持ち込み黙認」といった、昔の外務省がやっていた対米従属の
秘策について真相究明を進めると宣言している。沖縄密約については、当時の
外務次官らが昔の自分の否定証言を覆し、密約の存在を認めている。これらの
暴露は、外務省が権力維持のため在日米軍に象徴される対米従属を何とか維持
しようと策を弄し続けてきたことを露呈するもので、日本を対米従属から引き
剥がす民主党政権の隠れた戦略に沿ったものだろう。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20091208-00000054-mai-pol
沖縄返還費肩代わり>「外務省から密約説明」証言