形勢逆転

朝日新聞

 民主党が圧勝した総選挙から一夜明けた2009年8月31日、これまで自民を応援していた首長らがさっそく民主に接近したり、選挙中の言動の釈明に追われたりした。ほぼ半世紀にわたって政権を担ってきた自民党が野党に転落、民主党が与党になるのは初めての事態だけに、首長らもしばらくは右往左往しそうだ。


 「当選おめでとうございます。選挙中は、失礼なこともあったかも知れないが、理解してほしい。これからはノーサイドの精神でお願いします」。福岡県大牟田市の古賀道雄市長は8月31日朝、比例九州ブロックで復活当選した民主の野田国義氏の事務所を単身訪れ、あいさつした。野田氏は「わかりました」と応じた。

 野田氏の相手は、福岡7区で当選した自民党古賀誠氏。運輸相、党幹事長などの要職を歴任した実力者だ。

 
 古賀市長は総選挙では古賀誠氏を支援。公示日の2009年8月18日の出陣式で、八女市長だった野田氏を「市長時代の実績もない」などと厳しく批判した。

 今回の「和解」には、野田氏の選対本部長である民主の大久保勉参院議員が同席した。大久保氏は総選挙中、民主優勢が伝えられると、古賀誠氏を支援していた福岡7区内の4市長と面会し、「地方自治体の長は中立であるべきだ」とくぎを刺して歩いた。だが、古賀市長だけは「戦っている最中に会うのはどうか」と面会を拒否していた。

 古賀市長が古賀誠氏を支援したのは、有明海沿岸道路九州新幹線鹿児島ルート、三池港などの整備や、「第二の夕張」になりかねない市財政への国からの支援には同氏の政治力が必要だったからだ。

 ところが、民主党政権では古賀誠氏は野党議員になることが確実に。古賀市長は、同氏の実力に引き続き期待する一方、民主とのパイプづくりも迫られた。野田氏訪問は、その第一歩だった。


 長崎県金子原二郎知事は8月31日、県庁で記者団に「総選挙では、自民を特別応援してきたわけではない」と釈明した。知事は、たびたび自民党候補の集会に応援に入り、「民主のマニフェストには財源の裏打ちがない」などと訴え、旗幟(きし)を鮮明にしてきた。しかし、4小選挙区すべてで自民候補が敗北。この日は「お世話になった方から案内があった会合に出た」と説明した。

 
 金子知事は、長崎2区で落選した自民の久間章生氏の集会で「久間先生がやめる結果になっていいのか。冷静に考えてほしい」と呼びかけたこともあったが、8月31日には、久間氏を破った民主の福田衣里子氏について聞かれると、「大変しっかりした方。今後、県の事業について説明申し上げたい」と述べた。