反民主党の人たち

 産経新聞 政治部長乾正人

 7月13日の麻生太郎首相による異例の「解散宣言」以来、長い助走期間を経てようやく衆院選が公示された。いよいよ政権交代を懸けた歴史的な選挙に突入した、と書きたいところだが、勝負の大勢は決しつつある。

 自民党内の「麻生降ろし」失敗も影響して民主党の圧倒的リードで始まった選挙戦だが、一部の選挙区で自民党候補が巻き返しているほかは、「民主優勢」の流れは変わっていない。与党側はできるだけ投票日まで長い期間をとって有権者の「政権交代熱」を冷まそうという作戦をとったが、成功しているとは言い難いからだ。

 4〜6月期の国内総生産(GDP)は、5四半期ぶりに年率換算で3・7%アップしたものの、生活実感は景気回復からほど遠い。しかも年金、介護、医療といった生活に直結する問題に対する国民の不満は、生半可なものではない。麻生首相への低支持率は、経済政策への不満だけではなく、公務員改革をはじめとする抜本改革を怠ってきた政府・自民党への国民の嫌悪感のあらわれでもある。しかも衆院解散以降、3回はあった反撃のチャンスを自民党はことごとくつぶしてしまった。

 一つは政権公約マニフェスト)づくりの失敗。民主党子ども手当、高速道路無料化といったバラマキ策に対抗しようと似たような政策を盛り込み、メリハリのないものになってしまった。21世紀臨調が主催したマニフェスト検証大会でも平均点で財源の裏付けに乏しい民主党マニフェストの後塵(こうじん)を拝する始末だった。

 二つ目は候補者擁立の失敗。比例代表の候補者が「郵政民営化」を争点とした4年前とほとんど変わっていないのは致命的だ。老舗の暖簾(のれん)にあぐらをかき、季節はずれの商品を売っているようでは、消費者がそっぽを向くのも当たり前だ。

 そしてもう一つ。しつこいようだが、8月15日に麻生首相靖国神社を参拝しなかったことだ。民主党鳩山由紀夫代表が無宗教の国立追悼施設建設に前のめりになっているだけに、麻生首相の「(戦死者の慰霊は)最も政治やマスコミの騒ぎから遠くに置かれてしかるべきものだ」との発言は、少なからぬ自民党支持層を落胆させた。国家のため一身を犠牲にした人々への慰霊は保守政治家にとって欠くべからざる政治的行為のはずである。
 政策でも候補者でも精彩を欠く自民党が苦戦を強いられるのは必至だ。いわば自民党の自滅によって、民主党中心の政権樹立は秒読みに入ったといっていい。


 ただし、民主党政権の「危うさ」が事前に明るみに出つつあるのは、この長い選挙戦のおかげというべきだろう。

 日の丸を継ぎはぎにしてつくった党旗を集会で掲げた“事件”は小さな問題ではない。「神は細部に宿る」とはよくいったもので、国旗に対する無神経さは、日の丸・君が代を否定してきた旧社会党勢力も合流した民主党が内包する「危うさ」をよく示している。

 鳩山代表非核三原則法制化をめぐる発言のブレも永住外国人への地方参政権付与への積極姿勢も「危うさ」の範疇(はんちゅう)にはいるが、実は最も危ういのが党運営である。


 象徴的だったのが、候補者の当落を左右する比例代表の名簿順位づけだった。鳩山代表岡田克也幹事長が17日夜、党本部を出た後、最終調整を一手に担ったのが小沢一郎代表代行だった。順位で厚遇された候補者が恩義を感じるのは誰か。答えはいわずもがなだろう。
 有権者は、自民党への嫌悪と民主党への危惧(きぐ)の狭間(はざま)で、どちらを選ぶのか。あるいは別の政党や候補者を選択するのか。考える時間はまだ10日以上ある。

 カトリックの麻生さんが靖国神社へ行くはずもないでしょ。
 
 小沢さんが「選挙」の責任者だから決定権があるのは当然でしょ。
 産経新聞では人事権のある人にどう対応しているのかな?