妄想 「ベルサイユのばら」 田中麗奈さんに期待


毎日新聞」より。

 女優の田中麗奈さん公式HP(29)が、少女マンガの名作をモチーフにした松田奈緒子さんのマンガが原作のNHKドラマ「派遣のオスカル〜『少女漫画』に愛をこめて」(仮題)に主演することが5月26日、分かった。田中さんがNHKドラマ初出演で、少女マンガ命のさえない派遣社員を演じる。

   田中麗奈さん→


 原作は、松田さんが2007年にマンガ誌「コーラス」集英社)に連載した「少女漫画」。池田理代子さんの「ベルサイユのばら」や大和和紀さんの「あさきゆめみし」、美内すずえさんの「ガラスの仮面」、魔夜峰央さんの「パタリロ!」、くらもちふさこさんの「おしゃべり階段」など少女マンガの名作を題材にした連作。

 ドラマは、彼氏もいない派遣社員の勝子(田中さん)が、「ベルサイユのばら」の世界を妄想しながら冴えない日々を過ごしていた。関西弁でまくしたてる社長ジュニア(徳井義実さん)が、理不尽なコスト削減をする姿を見て、民衆のために立ち上がるオスカルの声が聞こえてくる……というストーリーだ。

 共演は、鈴木杏さん公式ブログ)(22)→


平泉成さん(64)、上條恒彦さん(69)ら。脚本は映画「電車男」の金子ありささん。5月末から撮影開始、2009年8月28日から金曜日午後10時放送(全6回)。【岡本同世】

朝日新聞」より。

 少女漫画 [作]松田奈緒子 [評者]山脇麻生氏。 [掲載]2008年3月2日
 少女漫画のキラキラ目って宇宙みたいだ。大きな黒目に幾つも星が飛んでいる。本作は、そんな煌(きら)めくアーモンドアイを、大胆にカバー中央に据えたデザインが印象的。眉は下がり、瞳は悲しみの涙に濡(ぬ)れているが、だからこそ一層輝いて見える。

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 『ベルサイユのばら』や『ガラスの仮面』といった名作をモチーフにした連作のなかには、努力が認められず、搾取される日々に疑問を持つ派遣のOLや、挫折することで周囲の偏見と自身の仮面を取り払うことができた女子アナ、わが子に完璧(かんぺき)を求めるあまり、子どもの気持ちを無視した子育てをしてしまう母親が登場する。そう、ここに描かれているのは、社会や人間関係のひずみから噴出した幾種もの“痛み”や“悲しみ”。当人の思惑と違う方向に現実が進んでいくとき、ドロドロに陥りがちな感情も、少女漫画というフィルターを通すことで濾過(ろか)されるのか、悲しみの感情もまた、美しいことを教えられる。クールな描線も、その作用に寄与しているのだろう。

 逆に、作者はクローズな世界だった少女漫画界のフィルターを取り払い、ほぼ全編を通して登場する少女漫画家・俵あんに、製作の現実について語らせた。売れている作家、売れていない作家、それぞれに秘めた悲しみがあるのだが、どちらも少女漫画の存在によって癒やされ、瞳に輝きを取り戻す。カバーに象徴される涙で浄化された瞳のように。