安蘭けいさん、遠野あすかさんら宝塚星組を卒業


宝塚歌劇支局」より引用。

 星組安蘭けいさんのサヨナラ公演、ミュージカル「My dear New Orleans〜愛する我が街」とレビュー・ファンタスティーク「ア ビヤント」が、4月26日東京宝塚劇場で千秋楽を迎え、終演後の日比谷界隈にはファン8000人(主催者調べ)が集結、安蘭さんの旅立ちを見送った。今回はこの模様を報告しよう。

 宝塚生活19年、安蘭さんのラストデーは、快晴に恵まれ、まさにサヨナラ日和。芝居、ショーともいつもより力がこもり、アドリブも満載。まさに男役生活の集大成という感じ。

 一方、ショーではリラックス。最初の銀橋の場面からアドリブをポンポン。女役のくだりでは頭に「77」(第77期生にちなんだ数字)の飾りをつけ、故郷滋賀県のゆるきゃら、袴姿のひこにゃんを手に、普通は「ララララ」と歌うところを「ナナナナ」とうたってアピール。満場の爆笑を呼んだ。

 サヨナラショーは大劇場と同じ構成で約30分。思い出の曲をたっぷり熱唱。さすがにラストの「ひとかけらの勇気」では感極まったかのよう。

 緑の袴での最後の挨拶には同期生の春野寿美礼さんが花束プレゼントに登場する豪華版。「19年間いろんなことがありましたが、きょうこの幸せな時を迎えるためにがんばってきたように思います。達成感と充実感で満足といいたいところですがやはり寂しい。明日からはまた第2章が始まります。またどこかでお会いしましょう」と万感を込めて挨拶。鳴りやまぬ拍手に何度もカーテンコールが繰り返され、最後に緞帳前に現れた安蘭さんが会場の全員に「瞳子さん愛してる」と叫ばせるなど涙と笑いのラストステージだった。

 終演後の会見では「きょうこれから第2章が始まります。これからもよろしくお願いします」と女優再出発を正式に宣言。「皆さんに感動を与えられる歌い手であり演者になれるよう精進したい」と抱負を話した。

 この日は相手役の遠野あすかさんはじめ計10人が退団あいさつをしたが、遠野さんは寂しい」と涙にくれ、立樹遥さんは「悔いはありません」とさわやかな表情。和涼華さんも「10年間本当に幸せでした」と笑顔で旅立っていった。

 劇場前には終演後も遅くまで多くのファンが帰らず、退団者が出てくるたびに大きな声援を送っていた。

 なお、安蘭けいさんの女優復帰第1作は、「The Musical AIDA〜宝塚歌劇”王家に捧ぐ歌”より」(木村信司氏脚本、演出)に決まった。安蘭さんが当たり役アイーダに再び挑戦するもので、復帰第1作には願ってもない作品となった。共演はラダメスに伊礼彼方、アムネリスはANZAが扮する。公演は8月29日から9月13日まで東京国際フォーラムC、9月18日から10月4日まで大阪・梅田芸術劇場となっている。


ニッカンより。 

 宝塚歌劇団星組の主演娘役遠野あすかさんが2009年4月26日、東京宝塚劇場公演「My dear New Orleans」で宝塚に別れを告げた。

 紋付きはかま姿で大階段を下りた遠野さんは宝塚が大好きです。これからは客席から応援します」。とあいさつした。


遠野あすかさん 



サンスポより引用。

 宝塚歌劇団星組トップスター、安蘭けいさんが2009年4月26日、東京・有楽町の東京宝塚劇場で千秋楽を迎えた星組公演で退団。19年の宝塚生活に別れを告げた。

 公演後のサヨナラショーでは思い出の作品の歌を次々に披露し、歌唱巧者ぶりを全開。最後の大階段を降りると、時折涙をこらえつつ「我が宝塚人生に全く悔いはありません」とあいさつした。

 会見で「夢と感動を届けられる舞台人、歌い手、演者としてやっていきたい」とした安蘭さん。今後、「The Musical AIDA」(東京国際フォーラムで8月29日〜9月13日、大阪・梅田芸術劇場で9月18日〜10月4日)の主演で女優デビューも決定。在団中、初の女役で評価されたアイーダ役に新たに挑み、熱く再始動する。この日、娘役トップスターの遠野あすかさんらも同時に退団した。

安蘭けいさん

中日スポーツより引用。

 宝塚歌劇団を代表するトップスター、星組安蘭けいさんが2009年4月26日、東京・日比谷の東京宝塚劇場でサヨナラ公演の千秋楽を終え、宝塚音楽学校から数えて丸20年の宝塚生活に別れを告げた。

 サヨナラショーでは、「ヘイズ・コード」「THE SCARLET PIMPERNEL」など思い出の作品のナンバーを次々と熱唱。セレモニーには、先に退団した花組の元トップ春野寿美礼さんが、最後にただ一人残った同期(第77期生 1989年入学・1991年入団)のためにかけつけ、花束を贈った。はかま姿の安蘭さんは、「達成感、充実感、満足感でいっぱいですと言いたいところですが、寂しくて仕方ありません」と心境を吐露。それでも最後は、「明日から夢の第2章の幕が上がります。宝塚生活に全く悔いはありません。本当にありがとうございました」と笑顔であいさつを締めくくった。

 音楽学校を首席で卒業、早くから注目を集めた安蘭さん。豊かな表現力と華を備えたスターとして大輪の花を咲かせた。

 終演後の会見では、「(舞台上で)後ろを振り返った時、みんなが何とも言えない表情で私を見つめてくれて、幸せを感じた。見送る側の気持ちも感じて、幸せに卒業させてもらえてありがとうって思いました」と明かした。「宝塚はどんな場所?」と問われ、「青春です」。

 劇場の外では約8000人のファンが、見送り。「トーコさん」(愛称)という呼び掛けに、安蘭さんは何度も手を振り、りりしい姿で旅立った。今後は、新たに芸能活動をスタートさせる予定。

 また、娘役トップスターの遠野あすかさんも退団した。トップがそろっての退団は、宙組貴城けいさん紫城るいさん以来2年2カ月ぶり。

安蘭けいさん



朝日新聞『ヅカナビ』(中本千晶氏)2009年4月24日より引用。

これまでの宝塚ファン人生で、いわゆるトップスターの「さよなら公演」は何度となく観てきた。ああそれなのに、今回の星組公演、いつになく泣けるのは何故…?
 それはひとえに、トップスター安蘭けいさん自身が、これまでみせてくれた長い長いドラマゆえに違いない。
 思えば、トップの地位まで上り詰めるのに、彼女ほど苦労したスターもいない。音楽学校の試験(中卒から高卒まで受験できる)に3回落ちて、高卒時のラストチャンスにようやく合格。
 劇団に入ってからは比較的早くから注目されたものの、そこから辛抱の時期がとても長く続いた。だが、ある時期から見事に演技派スターに芸風を転換させて、トップの座を勝ち取った。
 結局トップになれたのは同期トップ(花組春野寿美礼さん、雪組朝海ひかるさん)のなかの一番最後だった。
 だが、トップになってからは彼女らしい役に恵まれた。『エル・アルコン』のダーティーヒーロー、ティリアン、『赤と黒』では待望のジュリアン・ソレル。
 そして昨年、『スカーレット・ピンパーネル』のパーシー・ブレイクニー役において、伸びやかな歌声、ユーモアセンス溢れる芝居と、その持ち味を如何なく発揮した。
 つい先日、この『スカーレット・ピンパーネル』の功績によって、宝塚歌劇団は第34回菊田一夫演劇賞の大賞を受賞した。この作品は「安蘭けいさんの代表作」としても宝塚史上にきっと名前を残すだろう。
 「努力すれば夢は必ず叶う」という、今どき誰も信じていないようなことを、彼女は身をもって証明してみせた。
 ファンに「夢」を与えるのが宝塚スターの仕事だが、安蘭けいさんは、「夢」を叶える喜びを、ファンに対して最高の形でプレゼントしたスターであったと思う。
 さよなら公演はミュージカル『My dear New Orleans』、ショー『ア ビヤント』の二本立て。
 『My dear New Orleans』で安蘭さんはニューオリンズの場末ストリートヴィルのミュージシャン、ジョイ・ビーを演じた。
 貧困と人種差別、そしてクレオールの美女「ルル」との恋と別れ。生きる希望を音楽のなかに見出した彼は、ふるさとニューオリンズに別れを告げ、音楽家としての夢に向かってニューヨークに旅立つ。
 ジョイのふるさとニューオリンズが「宝塚歌劇団」のメタファーであることは明らかだ。
 「My dear New Orleans ここがふるさと」
 ジョイが高らかに歌い上げるとき、観客は、今まさに歌劇団から羽ばたこうとしている安蘭けいさんをジョイにダブらせて涙せずにはいられない。
 ジョイとルル(遠野あすかさん)の恋模様にも、大人の実力派コンビだった安蘭&遠野の姿がダブってみえる。
 極めつけの台詞は何といっても、
 「おまえほど愛した女はいない。地獄にだって、付き合うさ」 
 この台詞を聞いたとき、ファンは皆確信する。「やっぱり二人は最高だった!」と。そして、このコンビのこれまでの舞台に思いを馳せるのだ。
 ショー「ア ビヤント」も、演出の藤井大介氏の思い入れがいっぱい詰まった舞台だ。トップコンビをはじめ、立樹遥さん、和涼華さんら本公演で卒業するメンバーの見せ場がふんだんに盛り込まれている。
 とりわけ、フィナーレにつながる一連の流れがいい。トップコンビのデュエットや、大階段でのソロ、黒燕尾の群舞など、さよなら公演の定番メニューをきっちり織り込みつつ、「最後に、これが観たかった!」とファンを泣かせるツボが要所要所に効いている。
 黒燕尾の男役による迫力の群舞場面、銀橋の安蘭を舞台から中心となって支えるのが、次期トップの柚希礼音さんである。
 今回のサヨナラ公演が良いのは、ひとつには、後を引き継ぐ柚希さんの磐石さもあると思う。
 「大丈夫、タカラヅカはずっと続いていくよ」という安心感。 
 タイトル「ア ビヤント」は、フランス語で「またね」という意味。永遠の別れのような重いシーンではなく、軽い感じで使う挨拶なのだそう。
 そう、「さよなら」ではなく、「またね」。
 とうこちゃん、今まで素晴らしい舞台をありがとう。そして、再びどこかで、その歌声を聴けることを願いたい。