061017 星組新人公演『愛するには短すぎる』(2006年10月17日 東京宝塚劇場)

解説=船上という限られた場所、4日間という限られた時間の中で起こった束の間の恋。それゆえの純粋さと狂おしさ、素晴らしさを切なく美しく描き出す。なお、この本公演は湖月わたるさんのサヨナラ公演(2006年10月6日〜11月12日 東京宝塚劇場星組公演)となった。

 
2006年10月17日(火)午後6時半開演 東京宝塚劇場星組新人公演ミュージカル 『愛するには短すぎる』原案/小林公平氏。演出/児玉明子氏。 

ストーリー
 フレッド・ウォーバスク(和涼華さん)は資産家であるウォーバスク家の養子である。彼は元の名をマイケル・ウェインといい、7歳のとき、一攫千金を夢見た父(七風宇海さん)に連れられ、母(純花まりいさん)と共にニューヨークへ出て来た。しかし父は事業に失敗し失意のうちに病死。母も後を追うように亡くなってしまう。孤児院に入った彼は、そこのオーナーだったウォーバスク氏(鶴美舞夕さん)に認められ養子となった。

 今、フレッドは英国留学を終え、友人のアンソニーランドルフ(彩海早矢さん)と共にサザンプトンからニューヨークへと向かう大西洋横断豪華客船の船上にいる。ケンブリッジの大学院を卒業したフレッドは、養父の事業を継承すべく帰国の途にあったのだ。
 航海初日、彼はバーバラ・オブライエン(陽月華さん)という女性と知り合う。彼女は船のバンドに所属するショーチームのメンバーだった。この航海を最後に故郷に戻り、小学校の教師をする予定だという。

 その日の夜、フレッドはバンドのマネージャーのフランク・ペンドルトン(麻尋しゅんさん)から言い寄られて困っているバーバラを助ける。しかしバーバラは事を荒立てないで欲しいと頼む。彼女は母親の治療のために、その男から借金をしていたのだった。フレッドはバーバラの話から、彼女が同じ街の出身であることを悟る。そのことを告げたフレッドにバーバラは本名(クラウディア・ヘニング)を名乗り、二人は幼馴染みだったことを知る。この偶然はお互いの心にささやかなときめきと葛藤をもたらす。しかしそれは胸の内に留めておくしかない感情だった。フレッドは資産家の娘ナンシー・ブラウン(花ののみさん)と帰国後婚約をすることが義務付けられていたのだった。しかしナンシーに対するフレッドの想いは、恋というにはあまりに穏やかで平坦な感情だった。フレッドの心には拭い難い疑念が湧き起こっていた。それは自らの生き方に対する問いかけでもあった。自分は何を望み、何を勝ち得てきたのか。人が羨む今の境遇は、自身の努力と才能の結果であるには違いなかったが、果たして自らが選んだ道だと言えるのだろうか。友人のアンソニーは、そんなフレッドの思いを鋭く見抜いていた。

 翌日、フレッドからバーバラを紹介されたアンソニーは、彼女に一目ぼれしてしまう。彼女の借金を知ったアンソニーは、それを肩代わりすべくフレッドに借金を申し込む。バーバラが救われるならとフレッドは承諾するが、時ならぬライバルの出現に心中穏やかではない。
 男二人の友情と恋の鞘当。フレッドとバーバラの微妙な心の推移。そんな想いを乗せ、船はニューヨークへと進んでいく。航海が気持ちの整理に力を貸してくれるだろう。そう願って船のタラップを上ったフレッド。自らの生き方にどのような答えを見出すことができるだろうか……。

「じょーねん's 宝塚レビューh」さんの [ http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/jonen-shozo/eid/405389/:title=観劇記]