090320観てきました『SAUDADE(サウダージ)』

☆☆☆3月20日(金)16時開演。 シアター・ドラマシティの25列なので(つまり最後列)双眼鏡を用意した。お陰で瀬奈さんをじっくり観る事ができた。ショーの構成からすれば14列までの通路側の席がベスト。瀬奈じゅんさんが会場内で歌があり、出演者全員も会場で踊ってくれたが間じかで見れなかったのは残念。これ以外は最後列はかなり見やすい=背伸びしても後ろがないからだ。全席7,500円。 ☆☆☆

 2009年3月6日(金)〜3月21日(土)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ月組公演『SAUDADE(サウダージ)』−Jにまつわる幾つかの所以− 作・演出/稲葉太地氏。瀬奈(せな)じゅんさん。   越乃(こしの)リュウさん。   花瀬(はなせ)みずかさん。   一色瑠加(いっしき・るか)さん。   桐生園加(きりゅうそのか)さん。  音姫(おとき)すなおさん。  青樹泉(あおき・いずみ)さん。  憧花(とおか)ゆりのさん。  麻月(あつき)れんかさん。  萌花(もえか)ゆりあさん。  宇月颯(うづき・はやて)さん。  煌月爽矢(あきづき・さや)さん。  鳳月杏(ほうげつ・あん)さん

 

『SAUDADE(サウダージ)』−ポルトガル語で郷愁や哀惜、追慕を表す。異郷で想う懐かしい故郷、遠く離れた愛しい人、もう二度と帰らない青春時代への憧憬。哀しみ、切なさ、辛さ、愛しさ、美しさ、輝き。時に胸の奥で疼く痛み。時に目指さなければならない未来へと導く光。異邦人たちが集まるこの世の果てで一人の男が感じるSAUDADE。様々な音楽から繰り出される歌や踊りを中心に、これらの心象風景を詩的な芝居の要素も取り混ぜながら描き出す。瀬奈じゅんさんの持つ魅力、孤高の中にある気高さ、対しての人懐こさ、そこに見え隠れする脆さや寂寥感、それ故より強く、強烈なまでに発せられるダイナミズムが溢れるショーアクト。

☆第Ⅰ幕 第1場「プロローグ」 第2場「夜の蝶」 第3場「人形の家」 第4場「Underground Freedom」 第5場「別れ」 第6場「戦場」 第7場「幻覚(Rhapsody in Blue」 第8場「Saudade」

☆第Ⅱ幕 第1場「流浪」 第2場「最果ての町−或いはJにまつわる幾つかの所以−」 第3場「LATIN POP(フィナーレ) 第4場「黒い鷲(エピローグ)」

                  

とある港町。黄昏時。一軒のカフェ。 様々な人間が集まっている。様々な思いを抱えながら。 余りに変わりばえのしない日常。昨日からの延長にすぎない今日、そして明日。しかしその単調な時間の中に、幾つかのドラマが生まれる。  偶然の出会いが、やがて忘れられない大切な思い出になるように。

☆J(ジョッタ):旅をつづける流れ者:瀬奈(せな)じゅんさん。  ☆マスター:カフェのマスター:越乃(こしの)リュウさん。  ☆マリア:哀しき未亡人:花瀬(はなせ)みずかさん。   ☆フェリペ:貴族的な男:一色瑠加(いっしき・るか)さん。   ☆アントニオ:旅芸人の男:桐生園加(きりゅうそのか)さん。   ☆イネス:旅芸人の女:音姫(おとき)すなおさん。   ☆ロベルト:俳優志望の青年:青樹泉(あおき・いずみ)さん。   ☆イザベル:いわくありげな女:憧花(とおか)ゆりのさん。   ☆デイヴィッド:船乗り:麻月(あつき)れんかさん。   ☆カルロタ:フェリペを待ちつづけている女:萌花(もえか)ゆりあさん。   ☆ミゲル:カフェの店員:宇月颯(うづき・はやて)さん。   ☆エドゥアルド:奇術師の弟子:煌月爽矢(あきづき・さや)さん。   ☆ジョルジュ:辻音楽師:煌月爽矢(あきづき・さや)さん


宝塚歌劇支局」より引用(090307)

 瀬奈じゅんさんを中心とした月組公演「SAUDADE(サウダージ)〜Jにまつわる幾つかの所以」(稲葉大地作、演出)が大阪・シアター・ドラマシティで開幕した。
 「サウダージ」は、瀬奈さん以下桐生園加さん、青樹泉さんはじめ総勢13人の月組選抜メンバーの出演による郷愁や哀惜、追慕をテーマにしたショーアクト。第1幕が、瀬奈さん扮するJの過去の人生をショー形式で描き、第2幕はとある最果ての港町の酒場に流れ着いたJのさまざまな人々との出会いと別れを描いている。


 ただし第1幕は、ただ見ているだけではJがどんな青年でどんな人生を歩んだのか、観客にはほとんど何も読み解くことはできない。プログラムによると「夜の蝶」「人形の家」「Underground Freedom」「別れ」「戦場」「幻覚(Rhapsody in Blue」とそれぞれの場面に題名がついていて、ようやくそれなりの人生が描かれていることが分かる。これによって自由放埒な青年が戦争で心に傷を受けるというぐらいの雰囲気はなんとなく分かるが、なんとも不親切ではある。荻田二世という感じ。

 ただショーとしてはプロローグからスタイリッシュで、早変わりもふんだんにあり、瀬奈のワンマンショーとしてはなかなか魅力的。客席で歌う場面もふんだんにありファンには応えられないだろう。


 「夜の蝶」は安寿ミラさんの振り付けで、萌花ゆりあさんが蝶役で瀬奈さんとからむ。「人形の家」は花瀬みずかさん、「Undergroundー」は憧花ゆりのさん、「別れ」は音姫すなおさんと場面によって相手役を替えて踊るが、申し訳ないが誰もあまり見分けがつかない。むしろ「別れ」の瀬奈さんと桐生さんのダンスデュエットの方が面白い。

 第2幕は港町の酒場での一夜の芝居になる。マスター(越乃リュウさん)が仕切る酒場で貴族風な男(一色瑠加さん)がカードをしていたり、いわくありげな女(憧花さん)らがなにやらたむろしている。そこへ流れ者(瀬奈さん)がやってくる。シルバーグレーのくたびれたスーツに真っ赤なシャツ、ズボンのポケットに無造作に手をつっこんで瓶ごとビールを飲み干す。まあなんとかっこいいことか。実際の男でもこうはいくまい。まさに男役の美学だ。

 ただ、芝居は稲葉氏が春野寿美礼さん主演の「ApartmanCinema」風の登場人物全員が割台詞で展開していく手法。前回は新鮮だったが、今回はこれによって瀬奈さんも群像の一人になってしまったほか、群像ドラマとしてもいまいちうまく作用しておらず、出演者一人一人に気を遣った音楽学校文化祭卒業公演のレベルで終っている。瀬奈さんが充実した男役の魅力をたっぷり見せているだけにこれはちょっと惜しい。

 フィナーレはラテン、黒エンビで瀬奈が再び魅力爆発するので、終わりよければという感じはあるが、全体的には何か?が残る出来ではある。

 瀬奈さん以外の出演者は桐生さん、青樹さんそして越乃さんがそれぞれの立場を際だたせていたが、それ以外では芝居でカフェの店員を演じていた宇月颯さんと船乗り役の麻月れんさんかがさわやかな雰囲気で印象に残った。