宙組の『外伝 ベルサイユのばら −アンドレ編−』と『ダンシング・フォー・ユー』


 2009年2月1日(日)〜2月23日(月) 中日劇場宙組公演 宝塚ロマン『外伝 ベルサイユのばらアンドレ編−』 原作/池田理代子氏。 外伝原案/池田理代子氏。 脚本・演出/植田紳爾氏。 ☆解説☆ フランス革命の動乱に翻弄されながらも、強く悲しく美しく生き抜いた人々の中で、オスカル一筋にその人生を捧げ、数奇な運命の苦難を乗り越え生きたアンドレ・グランディエ。その波瀾に富んだ人生に焦点を当てて描いた作品で、2008年より全国ツアー公演において、主人公を変えながら3部作として上演してきた『外伝 ベルサイユのばら』の最後を飾る公演。 併演はグランド・レビュー 『ダンシング・フォー・ユー』 作・演出/中村一徳氏。 ☆解説☆ 若さ、情熱に満ちたエネルギッシュなダンシング・ショー。パリやアメリカを舞台にしたオーソドックスな宝塚レビューの中に、都会的でシャープな感覚溢れるダンシングシーンを繰り広げます。


サンスポより引用。

 宝塚歌劇宙組による名古屋・中日劇場公演「外伝 ベルサイユのばらアンドレ編−」「ダンシング・フォー・ユー」が2009年2月1日に開幕した(2月23日まで)。

 2008年の全国ツアー公演で大評判となった超人気演目の“外伝3部作”の集大成となる作品に加えて、大和悠河(やまと・ゆうが)さん陽月華(ひづき・はな)さんのトップスターコンビが揃って退団を発表(2009年7月5日付)した直後の公演とあって、注目度は高い。

 主演はもちろん、アンドレを演じる大和さんだが、相手役の陽月さんの役は同シリーズ初登場のマリーズ。アンドレの幼なじみで、子供時代に誓った結婚の約束を信じ、再会するためにアンドレを探し続けている女性、という設定だ。

 華やかで美しい定番のプロローグのあと、舞台はアンドレの故郷プロバンスでの追想へ。両親を亡くした幼いアンドレ(天咲千華(あまさき・ちはな)さん)が、祖母のマロングラッセ(邦なつき(くに・なつき)さん=専科)に引き取られてベルサイユへ向かう日、幼いマリーズ(百千糸(ももち・いと)さん)はリボンを手渡して、再会の約束を交わす。

 そして20数年の月日が流れ、アンドレは主家のジャルジェ家のでオスカル(早霧せいな(さぎり・せいな=01年入団第87期生=)さん、凪七瑠海(なぎな・るうみ)さんのダブルキャスト)を、身分違いと知りながら、一途に深く愛するようになっていた。“黒い騎士”ことベルナール(凪七さん、早霧さんのダブルキャスト)との戦いで目を傷つけられ、失明を恐れながらも、オスカルを守り、いつも行動を共にしている。

 一方、マリーズはアンドレを探してベルサイユへ。はずれの居酒屋で働くうち、彼女を気にいったブイエ将軍(一樹千尋(いつき・ちひろ)さん)の養女となる。そして、オスカル率いる衛兵隊がパリに出陣する直前、ブイエ邸を訪ねたアンドレとついに再会。それまでの思いの丈をぶつけるが、アンドレは受け入れることができなかった。トップスターコンビが舞台上で顔を合わせるのは、ドラマのなかではこの1シーンだけだ。

 ついに革命の戦闘が始まり、アンドレもオスカルも戦死。そのことをマリーズに知らせに来たのはマロングラッセで、アンドレから預かったというリボンを手渡す。エピローグは白い軍服姿のアンドレが、ひとり歌って天国の階段へ…。

 配役はほかに、フェルゼン=悠未ひろゆうみ・ひろ)さん、アラン=北翔海莉(ほくしょう・かいり)さん、ジェローデル=十輝いりす(とき・いりす)さん、ジャルジェ将軍=箙かおる(えびら・かおる)さん(専科)ら。

 物語の説明役はマリングラッセで、これまで敵役だったブイエ将軍がなかなかの好人物に描かれている。田舎娘のマリーズが淑女へ変身する姿は、さながら「マイ・フェア・レディ」のイライザ。アンドレやマリーズの言葉のなまりは、なぜか高知弁っぽかった。

 登場人物のほとんどが片想いの一方通行だが、それでも自分の信じる愛を全うし、その愛に殉じる姿は、美しくせつない。


  
        大和悠河さん と 陽月華さん