麻央侑希(まお・ゆうき)さん一生に一度のチャンス

 阪急・阪神電鉄沿線の年末年始を彩る「初詣でポスターモデル」に今年は身長175センチの大型新人、星組・麻央侑希さんが起用された。長い手足にエキゾチックな顔立ち、舞台映えするルックスは将来を大いに期待できるタカラジェンヌのひとりだ。祖父はプロ野球西武ライオンズなどを日本一に導いた広岡達朗氏。厳しいことで知られた“名将”の血を引く麻央が、タカラヅカの舞台で輝く日もそう遠くはない。

       

 
 伝統の緑の袴をつけ、破魔矢を手に微笑む姿が初々しい。期待の大型新人、麻央さんが一生に一度のチャンスをモノにした。 最初に知らされた時は「え? 私が?」とあっけにとられていたが、徐々に「緑の袴…きちんと着こなさなきゃとか、表情…どうしたらいいの? とかいろんな意味での責任感が出てきました」と実感が沸いてきた。撮影時も「普段、プリクラとかならそれなりに表情もできるのに、1人でカメラに向かって…っていうのが難しくて難しくて。本当に緊張しました」と振り返る。ポスターを自分で見た時は「恥ずかしい! でも自己解決としては“初々しい”です」。笑いを交えながら話す姿は好感度も大だ。

 2008年は音楽学校を卒業し、歌劇団への入団。大作「ME AND MY GIRL」で初舞台を踏んでから星組に配属となり、初めての本格的な新人公演「スカーレット・ピンパーネル」ではピンパーネル団のひとり、ハルを演じた。いきなり役が付くなど、彼女への期待の高さがうかがえる新公だったが、本人は環境が激変した1年の中で必死だった。「追われて追われて追われた1年でしたけど(笑)、追われた甲斐があったなって思います」。

 父方の祖父はプロ野球西武ライオンズなどを日本一に導いた広岡氏。しかし、現役時代はもちろん、監督時代も彼女はまだ生まれていない。「お家にあった昔の新聞の切り抜きとかでしか見たことないんです。管理野球? とか結構厳しかったとか恐かった、なんて聞いてもピンと来ないんです」と笑う。

 確かに、音楽学校の卒業式に列席した広岡氏の表情は柔らかく目尻は下がりっぱなしだった。その祖父も今回の「初詣でポスターモデル」には「アンタがやるんかい?」とびっくりしていたそうだ。

 タカラジェンヌとして最高のスタートを切った麻央。しかし、舞台人としてはまだまだ山を登り始めたばかりだ。「初舞台の口上で、自分の声が大劇場に響いた瞬間、うれしいと思う一方でその声の未熟さを痛感しました。見かけによらず私は声が高かったり“外見と中身が違う”ってよく言われるんですが、女々しい性格だったり…。今は自分の未熟さにがっかりすることばかりですが、スーツの似合う男役さんになりたい」。大きな夢に向かい、一歩一歩努力する日々が続く。

 ◇初詣でポスターモデル 毎年、新入団者(研1)から1人だけ選ばれ、阪急沿線各駅の年末年始を飾るポスターモデル。阪急・阪神の統合で、2006年の年末からはこのポスターや車内づりが阪神沿線にも張り出されるようになった。 タカラジェンヌがこのポスターモデルを務めるようになったのは1972年(昭47)からで、第1号は北原千琴さん。その後も黒木瞳さん、天海祐希さん、純名里沙さん、花総まりさんらそうそうたるメンバーが務めてきた。宙組トップスターの大和悠河さん(1996年度)、宙組娘役トップスターの陽月華さん(2001年度)、花組娘役トップ桜乃彩音さん(2003年度)も務めてきた。