毎日新聞の指摘は正しい

 かなり「不可思議」な事件です。これほど捕まりたい犯人も珍しい。証拠品を持参の自首など聞いたことがない。しかし、定職もない、つまりそれほどの人が家賃も滞りなく生活し、レンタカーも借りることは不自然です。 

 小泉容疑者は、二つの事件で3人を殺傷したことを認める供述をしているという。しかし、本当に単独で事件を起こせたのか、何らかの背後関係がないのかははっきりせず、警視庁や埼玉県警の捜査本部は慎重に裏付け捜査を進めている。

 警視庁野方署捜査本部は23日、小泉容疑者が血のついたナイフを所持し、「自分が殺した」と話したことから、殺人未遂容疑で小泉容疑者の自宅と車を家宅捜索した。捜索では血のついた手袋も見つかり、両事件への関与を明確にするため、小泉容疑者の所持品と現場の遺留品の照合を進めている。中でも、刃物や手袋についた血痕のDNA鑑定で被害者の血液と一致するかが鍵になる。

 現時点で他の容疑者の存在は浮かんでいない。しかし、無職なのに一定の収入があったとみられるなど不可解な点もあり、単独で起こしたかどうか追及する。

 動機については「ペットの恨み」があったとしても、なぜ元次官を標的にしたのか、被害者との接点は浮かんでいない。小泉容疑者が父親あてに出した手紙の内容が解明の手がかりと見られる。

 両事件への関与が明確になれば、事件の重大性から、警視庁と埼玉県警が合同捜査本部を設置し、事件の全容解明にあたる可能性もある。【長野宏美】

毎日新聞 2008年11月24日 東京朝刊