ロシアの強さは本物だ

 アンドレイ・アルシャフィン(番号10)を筆頭に、ロシアの能力は予想外に高かった。 ロマン・ パブリュチェンコ(6シュート)、デニス・コロジン (5シュート)、アンドレイ・アルシャフィン (5シュート) シュートをうたなければゴールはありえない。

 朝日新聞より引用。

サッカーの欧州選手権は第15日の6月21日、スイス・バーゼルで準々決勝の3試合目があり、ロシアが延長の末、オランダを3―1で下し、旧ソ連時代の88年大会以来、5大会ぶりに準決勝に進んだ。

 ロシアが後半11分、パブリチェンコのゴールで先制。オランダが後半41分、ファンニステルロイのゴールで追いつき、15分ハーフの延長に持ち込んだ。

 ロシアは延長後半7分、トルビンスキが勝ち越し、さらに4分後、アルシャビンが追加点を奪った。

 ロシアは6月26日の準決勝でスペイン―イタリアの勝者と対戦する。

 公式HPより。コメント

ロシアのフース・ヒディンク監督
 選手全員を誇りに思う。ギリシャスウェーデンという厳しい試合の後、休養期間は2日だけだったが、私たちはほとんど不平を言わなかった。戦術については昨日、10分間準備したほか、宿泊先のホテルで数回のミーティングを行った。90分の後、延長戦に突入したが、私たちは素晴らしい偉業を達成した。信じられない偉業だ。私の監督生活でも、このような経験をしたことは多くない。ボールコントロールやパスなど、ロシアは技術面で上だったが、戦術・身体の両面でもオランダをはるかに上回った。高慢と思われたくない。しかし私たちは、すべての面でオランダに勝っていたと思う。オランダの武器はFKしかなかった。それを利用されて1-1に追いつかれたのは痛かった。

 批判すべき点もある。ファウルが多すぎた上、FKの時に受身になった。守備と中盤の連携は良かったが、チャンスを生かせなかった。しかし、選手のことは誇りに思う。非常に指導しやすい選手たちだ。スウェーデン戦でも同じだった。アルシャフィンは出場停止処分を終えた後だったため、実戦での体調が万全でなかった。しかし、素晴らしい技術を持っており、自分の持ち味も理解している。(過信して)悪い態度をとっても仕方がないが、そんなことはまったくない。準々決勝進出を決めた時、(モスクワの)赤の広場などロシアの多くの街が人に埋め尽くされた。ロシア全土が歓喜に包まれた。多くのロシア人に喜びを与えるためにも、私たちの責任は大きくなった。

オランダのマルコ・ファン・バステン監督
 試合への入り方が過去3試合のように、うまくいかなかった。その理由は分からないが、緊張感があったかもしれない。後半、やや深い位置でプレーしていたディルク・カイトに代えてファン・ペルシを投入し、高い位置でプレーさせることで打開を試みた。ロシアは素晴らしいサッカーをした。アルシャフィンと(ロマン・)パブリュチェンコには常に脅やかされ続けた。そのためになかなか試合に入っていけなかった。私たちは全力を尽くした。1-1の同点に追いつき、希望も生まれた。ハリド・ブラルズは万全の状態でなかったので代えた。フィジカルに問題を抱えていた選手はほかにもいた。選手は力を出し尽くしたが、最後はロシアの方が強かった。終盤は持ちこたえられず、2点を許した。彼らは勝利にふさわしいチームだと思う。

 ロシアの準決勝以降の健闘を祈りたい。素晴らしいサッカーだったと、彼らに伝えた。ベスト4に残ったことで、(優勝の)チャンスも大いにある。ロシアのスタイルは素晴らしい。FWとDFに良い選手もそろっている。 (大会を振り返ってみると)グループリーグで良いサッカーができたが、今日の試合はうまくいかなかった。あれだけ長い時間、0-0だったことが不思議なくらいだ。こういった大会には常に優勝すために出場している。グループリーグも大切だが、今日は良い一日でなかった。ロシアの最後の試合は18日だった。私たちの大半の選手に1週間の休養があったことを考えれば、オランダの方が良いコンディションにあると思われただろう。だが私たちは今日、それを見せることができなかった。

ロシア=グループリーグ2008/6/10 VS スペイン●1-4 2008/6/14 VS ギリシャ○ 1 - 0  2008/6/18  VS スウェーデン○ 2 - 0  (グループD 2位) 準々決勝2008/6/21 VS オランダ○ 3 - 1 (ベスト4 準決勝へ)

 21日にスイスのバーゼルで行われたUEFA EURO 2008(TM)準々決勝は、ロシアが延長でオランダを3-2で下し、4強入りを決めた。


延長戦で2得点
 ザンクト・ヤコブ・パルク行われた一戦は、ロシアが56分にロマン・パブリュチェンコのゴールで先制する。その後は守備を固めカウンターを狙うロシアだったが、追加点のチャンスを生かせず、逆に86分、FKからルート・ファン・ニステルローイの同点ゴールを許した。延長に入ると、再度攻撃的な姿勢を押し出したロシアは、112分にドミトリ・トルビンスキーが勝ち越し点を決めると、116分にもアンドレイ・アルシャフィンが試合を決める3点目。UEFA欧州選手権では、準優勝した旧ソ連時代の1988年大会以来、初めての準決勝進出を決め、26日にウィーンで行われる準決勝でスペイン対イタリア戦の勝者と対戦することになった。一方のオランダは、3大会連続の準決勝進出を逃した。


オランダ、主力選手が復帰
 オランダは、グループリーグでイタリア、フランスに快勝した時と同じメンバーが先発。ファン・ニステルローイ、ベスレイ・スネイデルなど主力選手が出場した。絶好のコンディションで始まった試合は、劣勢を予想されたロシアが主導権を握る。序盤からユーリー・ジルコフのFK、デニス・コロジンのミドルで先制点に迫る。8分にも絶好のチャンスをつかむが、パブリュチェンコのヘディングはゴール枠をとらえることができなかった。


オランダの攻撃力
 グループリーグの3試合で9得点を記録したオランダは今大会、圧倒的な攻撃力を発揮してきた。しかし、ロシアの守備陣は、素早いプレスで“オランイェ(オランダ代表の愛称)”にスペースを与えない。それでもオランダは、徐々にリズムをつかみ始めた。19分、相手DFを巧みにかわしたベスレイ・スネイデルがシュート。26分にはCKの後、オルランドエンヘラールのシュートが惜しくもゴール右に外れた。その2分後には、右サイドで獲得したFKをラファエル・ファン・デル・ファールトがけり、ファン・ニステルローイがさわればゴールという場面もあった。しかし、グループ初戦のスペイン戦で4失点をした後、2試合を完封したロシアの守備陣はこの攻撃をなんとかしのいだ。


ほぼ互角の数字
 ロシアも30分すぎに連続して好機をつかんだ。逆襲から左サイドを崩し、アルシャフィンが至近距離からシュート。オランダのGKエドウィン・ファン・デル・サールは、懸命のセーブでCKに逃れた。その直後にも、コロジンが強烈なミドルで2度、ゴールを襲った。一方、オランダにも好機が生まれる。37分、右サイドでコロジンをかわしたファン・ニステルローイがシュートし、アキンフェエフは懸命のセーブでこれを防いだ。ロシアは44分にも危機を迎える。DFのミスパスを自陣ペナルティーエリア近くでパスをファン・デル・ファールトに奪われ強烈なシュートを浴びたが、守護神アキンフェエフが正面のボールをはじいた。ボール支配率、シュート、チャンス数など、両チームはほぼ互角の形で前半を終了した。


パブリュチェンコが先制
 オランダのマルコ・ファン・バステン監督は、後半からディルク・カイトに代えてロビン・ファン・ペルシを投入。アーセナルFCの24歳は、出場直後にボレーシュートで先制点に迫った。一方のロシアはその後も鋭いショートカウンターを仕掛け、得点の香りを漂わせていた。そしてアルシャフィンのFKが惜しくも外れた直後、待望の先制点が生まれる。セルゲイ・セマクがアルシャフィンのパスから左サイドを抜け出し、左足からの絶妙なクロスを入れると、飛び込んできたパブリュチェンコが左足で合わせて均衡を破った。


終盤の同点ゴール
 オランダも同点ゴールを目指して懸命に攻め続けるが、守勢に入ったロシア相手にチャンスをつくれない。逆にゴールに近づいたのはロシアだった。アレクサンドル・アニュコフ、パブリュチェンコらが次々に追加点に迫り、83分にもあと一歩で勝負を決める追加点を挙げそうになった。その3分後、ロシアは再三の逸機を一時的に後悔することになる。オランダは敵陣の左サイドでFKを獲得。スネイデルファーサイドにボールを送ると、DFに競り勝ったファン・ニステルローイが頭で決めた。


トロビンスキーが勝ち越し点
 前日のクロアチア対トルコ戦に続いて、準決勝は延長戦に持ち込まれたが、2夜連続のPK戦にはならなかった。延長戦に入ってからも次々と決定機をつかむロシアは、パブリュチェンコのシュートがクロスバーを直撃するなど、惜しい場面をつくりだす。そして延長戦後半22分、切れ味鋭いドリブルで終始オランダDF陣を翻弄していたアルシャフィンが、左サイドを攻め上がり浮き球のクロスを上げる。GKファン・デル・サールの頭上を越えたボールに、ファーサイドに駆け込んだトルビンスキーがポスト際に押し込んで待望の勝ち越し点を挙げる。さらにその4分後には、右サイドを抜け出したアルシャフィンが、鋭いシュートでファン・デル・サールを破り、試合を決めた。

グループリーグ3試合目で“Bチーム”を編成するのは正解か

 試合は終わった。お互い攻撃的に戦った熱戦は、ロシアが延長戦の末に3−1で勝利した。技術、戦術、フィジカルのすべてでロシアがオランダを上回った。
 不思議なのは、グループリーグ最終戦を“Bチーム”で戦い、ロシア戦では休養十分だったオランダが、明らかにフィジカルで劣っていたことだ。ロシアは3日前、スウェーデンと激戦の末、ようやく準々決勝進出を決めたばかりだった。
「何でフィジカルがこうなってしまったのか、自分でも分からない」
 オランダのファン・バステン監督は語った。ロシアのヒディンク監督は、「わずか2日しか準備期間がなく、大変難しい試合だった。オランダ戦に関することは、昨日のスタジアム練習の10分間、そしてホテルでのミーティングだけだった」と語る。これでは、なぜ、ロシアの方がフィジカルが優れていたか――の答えにはならない。

 ひとつ問題を提起しておきたいのは、グループリーグ3試合目で“Bチーム”を編成するのは果たして正解か――ということである。
 今大会の準々決勝は、ここまで3試合を終え、グループリーグ首位チームが3連敗中である。この3チームは、グループリーグ第2戦目に1位勝ち抜けを確定しており、2位以下のチームに比べてハッキリとした強さを誇っていたはずである。ところが、3試合目を休んで約1週間の休養を取った直後の試合で、ポルトガルもオランダもおかしな試合をして負けてしまった。

 ヒディンクは延長戦に入ってなお、まだ2人しか交代枠を使っていなかった。112分にロシアが2−1とする直前、ファン・ニステルローイが負傷したが、ファン・バステン監督はすでに3人を代えており、ファン・ニステルローイを起用し続けなければならなかった。
 監督の交代策の違いは、やはりフィジカルコンディションの差から出た。
 ファン・バステン監督は、「ブラルースのフィジカルが悪く、早く交代枠を使う必要があった」と言った。ブラルースの場合、プライベートの悲しい問題(生まれたばかりの娘が死去)もあったため理解できるが、ファン・バステンは、「今日はそれ以外にも何人かシャープさを保てていない選手がいた」という。

 実はオランダでは、グループリーグ3試合目のルーマニア戦を「フルメンバーに近い編成で戦うべきではないか」という意見がいくつかあった。いわく、「ユーロ(欧州選手権)のような短期決戦では、5月までの複数大会を同時並行で戦うシーズンとは違う調整方法が必要になる」というものである。
「せっかくいいリズムをつかんで2試合戦ったのに、3試合目で休んで準々決勝までの間隔を空けてしまうと、もう一度いいリズムを取り戻すのが難しい」という意見は、まさにポルトガル、オランダに当てはまる。