劇評 宝塚歌劇支局より 『ハレルヤGO!GO!』


 

 星組期待のホープ、柚希礼音(ゆずき・れおん)さん主演のバウ・ミュージカル「ハレルヤGO!GO!」(稲葉太地氏作、演出)が、宝塚バウホール1月2日開幕した。

 安蘭(あらん)けいさんの大劇場トップお披露目公演「さくら」「シークレット・ハンター」(2007年3月23日(金)〜4月30日(月) )のチラシが正月元日から配布され、いよいよ2番手扱いとなった柚希さん。上り坂の魅力が、このバウ公演でも爆発、稲葉氏の若い感性が反映された等身大の青春ストーリーが柚希にぴったりとはまって、バウ久々のヒットとなった。

 まずは柚希さんを中心に和涼華(かず・りょうか)さん、綺華(あやか)れいさんらのプロローグのダンスシーンから開幕。若くはつらつとした大型男役3人のダンスはいかにも星組らしい雰囲気。早くも手拍子がわく。

 時は現代。ダンサーとして成功したデニス・ガルシア・ジュニア(柚希)が、結婚式を挙げるために故郷の田舎町に帰ってくるところから始まる。幼なじみからなぜ故郷で挙式するのかと訪ねられたジュニアは、夢を果たせなかった父親の思い出話を語り出す。

 ここから舞台はディスコ全盛の1975年にワープ。父親のデニス(柚希)母親ブレンダ(陽月華/ひづき・はな)のダンスがとりもったラブストーリーが展開していく。

 「ハッスル」や「ドゥー・ザ・ウェー=多分これは間違い 正しいのはK.C.&ザ・サンシャイン・バンド のThat's The Way じゃないかな」など75年当時の大ヒット曲がふんだんに登場、ディスコ世代には涙ものの懐かしさ。稲葉氏は29歳というからちょうど作者の両親の時代のお話だ。
 しかし、ノスタルジックな雰囲気はなく、等身大の若者を描いた青春群像になっており、ストーリーテリングも巧みでテンポもよく、何でもない話が、非常に心地よく展開、最後には思わずホロリとさせる結末まで用意、柚希主演作にぴったりのさわやかな後味のミュージカルに仕上がった。
 
 柚希さんは、これまでクラシック系のダンスに非凡な才能を発揮していたが、今回はディスコダンスに挑戦、ちょっとワルぶった役どころと共に、セクシーな男役として新生面を開拓した。

 この公演を最後に宙組に娘役トップスターとして組替えになる陽月華さんも、持ち前の華やかな雰囲気を自然体の演技で体現。柚希さんとの最初で最後の本格的な共演に花を添えた。

 一方、和さんも、柚希さんの親友役ブライアンというデニスとは対照的な役に挑戦。しかし、和さんの華やかな個性で陰にこもらず、柚希さんと対峙するいいコンビとなった。
 また、唯一、小悪党ガイ役の綺華さんが、ニヒルなムードを漂わせ、思いの外ぴったり似合った。

 ほかに、歌手役リンダの花愛瑞穂(かわい・みずほ)さんの歌唱力の確かさ、デニスの恋人役モニカに扮した蒼乃夕紀(あおの・ゆき)さんの芝居心ある演技と、配役のバランスもいい。

 ベテランではデニスの父親カルロスとDJ役の2役を演じた英真(えま)なおきさんシスター・フィアナの千雅(ちが)てる子さんが大きな存在感で支えた。

 やや優等生的なドラマ展開だが、変にウエットにならず、なかなかの仕上がり。稲葉氏としても前作よりは数段よく、今後に大いに期待したい。東京公演がないのが残念。これは見逃すと損。


にほんブログ村 演劇ブログ 宝塚歌劇団へ
にほんブログ村

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村