これからは健康が一番

産経新聞【主張】内臓脂肪症候群 実効性のある健診計画を(5月4日)

 

生活習慣病につながる動脈硬化を起こすメタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)に対する関心が高まっている。心臓病や脳卒中だけでなく、大腸の病気など急増する現代病とのかかわりが示されてきたからだ。

 一方で早期に食事制限や運動量の増加に励めば、健康を取り戻せることもわかっている。黄金週間を機会に一念発起して生活改善に乗り出してみてはどうだろうか。

 メタボリックシンドロームは、脂肪が腸など内臓を中心に蓄積した内臓肥満によって脂肪の代謝が異常になり、血圧が上昇し、血液中の糖分、中性脂肪が増える。それぞれの症状が軽度であっても、複数の症状が重なれば動脈硬化を引き起こす。

 さらに、脂肪組織は、アディポネクチンという善玉ホルモンを分泌してがんなどの病気の原因になる細胞の炎症を抑えている。ところが、肥満し脂肪組織が肥大化すると、このホルモンは出なくなり、炎症が拡大する。

 こうしたことから、高血圧、高脂血、糖尿病に加えて、食生活の高脂肪化と結びつけられる大腸がんなど戦後に急増した現代病の要因になることも予想され、それを裏付ける疫学データも出てきた。

 生活習慣病は、高血圧と糖尿病などを合併するケースが多く、症状を個別に治療するのは非効率だ。メタボリックシンドロームであることがわかれば、まず内臓脂肪を減少させることで、同時に発症するさまざまな生活習慣病を一網打尽にとらえ、一気に治すことができるのだ。

 昨年四月に日本肥満学会など内科系の八学会で作成した診断基準は、注意すべき内臓肥満の目安として男性の腹囲が八十五センチ以上、女性九十センチ以上とするなど簡潔な内容だ。これを目標にして暴飲暴食や運動量の不足を戒めるなど実行しやすい。

 厚生労働省は平成十八年度から、メタボリックシンドローム対策総合戦略事業として、診断基準を取り入れ、的確な指導を行う健康診断のプログラムを立てることなどを検討しており、予備軍、患者の把握に乗り出している。大幅な医療費削減にも結びつくだけに、気軽に取り組め、長続きし、実効性がある計画を期待したい。