NHKは9日、9月29日に最終回を迎えた連続テレビ小説半分、青い。」全156回のタイムシフト視聴率が6・9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)だったと発表した。タイムシフト視聴率は「録画再生率」「録画視聴率」とも言われ、2016年後期「べっぴんさん」の5・8%、17年前期「ひよっこ」の6・0%、17年後期「わろてんか」の5・3%を上回った。リアルタイム視聴率も前3作を超えた「半分、青い。」だが、録画も好調だった理由とは――。

 ビデオリサーチ社が2016年10月3日から新たな視聴率調査を開始。録画機器の性能向上、スマートフォンなどを使用したスマートデバイスによるテレビ視聴など、多様化した視聴形態に即した視聴率算出が近年の課題だったが、検討を重ね「総合視聴率」「タイムシフト視聴率」を新しい指標として採り入れた。

 総合視聴率とは、リアルタイム視聴率とタイムシフト視聴率(録画機器などで放送後7日以内、168時間以内に視聴)の合計(重複は差し引く)。

 調査開始後の朝ドラ全話平均を見ると

 ▽「べっぴんさん」(16年後期)総合=25・0%、リアルタイム=20・3%、タイムシフト=5・8%

 ▽「ひよっこ」(17年前期)総合=25・2%、リアルタイム=20・4%、タイムシフト=6・0%

 ▽「わろてんか」(17年後期)総合=24・2%、リアルタイム=20・1%、タイムシフト=5・3%

 ▽「半分、青い。」(18年前期)総合=26・2%、リアルタイム=21・1%、タイムシフト=6・9%

 際立つのは「半分、青い。」のタイムシフト視聴率の高さ。全話平均にならすと前3作から約1ポイント増だが、ビデオリサーチの公式サイトによると、終盤第25週の第145話(9月17日)は8・8%。NHK関係者によると、最終週(第26週)は9〜10%台の日もあるほど上昇したという。「ひよっこ」最終回(17年9月30日)のタイムシフト視聴率は8・6%。「半分、青い。」がいかに高いか分かる。

 この数字は何を意味するのか。

 NHKの木田幸紀放送総局長は9月19日の定例会見で「半分、青い。」について「今まで見たことのない朝ドラ。その新しさが(従来の朝ドラ視聴者層より若い)20〜40代の女性の視聴者を増やしてくれました」と評価したが、タイムシフト視聴率が伸びた背景の1つに、この20〜40代女性という“新しい視聴者層”があると、NHK関係者は分析している。

 「例えば、通勤や通学で午前8時からのリアルタイム視聴が難しい女性は録画をされていたと思われますし、家事などで“ながら見”の主婦の方は後から腰を据えて見たいと録画されるケースも多かったんじゃないでしょうか。それに、ヒロインの永野芽郁さんや相手役の佐藤健さんのファンの若い女性や、またSNS上の話題性の高さから今回初めて朝ドラを見たという若い女性も多かったですが、そういう人はそもそも午前8時から朝ドラを見る習慣がなく、録画が多かったと考えられます」

 もう1つの要因は、朝ドラに初挑戦した北川悦吏子氏(56)の脚本の“中毒性”。フジテレビ「素顔のままで」「ロングバケーション」「空から降る一億の星」やTBS「愛していると言ってくれ」「ビューティフルライフ」「オレンジデイズ」など数々の名作を生み“ラブストーリーの神様”と呼ばれるヒットメーカー・北川氏のオリジナル脚本。岐阜県と東京を舞台に、病気で左耳を失聴した楡野鈴愛(にれの・すずめ)が高度経済成長期の終わりから現代を七転び八起きで駆け抜ける姿を描いた。

 同じ日に同じ病院で生まれた“運命”の幼なじみ、鈴愛(永野)と律(佐藤)が織りなす40年にわたる恋物語豊川悦司(56)が“怪演”した漫画家・秋風羽織の人生訓など、数々の珠玉のセリフが視聴者を魅了。「あのセリフをもう一度聞きたいと録画再生される視聴者の方が多かったんだと思います。その証拠に、番組公式インスタグラムなどに書き込まれるコメントの中のセリフが正確なものが多かったです。1回見ただけで、あそこまで正確に書き起こすのは難しいと思います」

 朝ドラの王道「ある職業を目指すヒロイン」「偉業を成し遂げる女性の一代記」とは異なり、北川氏は「『朝ドラだから、こういうことはやめておこう』という考え方はせず、一切逃げないで書いた156本だったと思っています」と朝ドラらしからぬ作風を貫き、朝ドラ史上初となる“ヒロインの胎児時代”など数々の仕掛けで朝ドラ史に新たな一歩を刻んだが、若い視聴者を獲得し「録画再生率も高い」という新たな視聴スタイルも生み出した。
[ 2018年10月10日 11:30 ]