重大事故 『JR福知山線脱線事故』 加害者責任を問えず

企業の責任は一体だれがとるのか?


日本経済新聞

 兵庫県尼崎市で2005年4月に乗客106人が死亡したJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長(井手正敬元相談役(82)、南谷昌二郎元会長(75)、垣内剛元顧問(73))について、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は13日までに、検察官役の指定弁護士の上告を棄却する決定をした。12日付。一、二審の無罪が確定する。


NHK

 裁判では、ATS=自動列車停止装置を設置させるべきだったかどうかが争われ、3人は無罪を主張しました。1審の神戸地方裁判所と2審の大阪高等裁判所は、いずれも無罪を言い渡し、検察官役の指定弁護士が上告していました。

 
 これについて、最高裁判所第2小法廷の山本庸幸裁判長は「事故の前は、法律上、ATSの整備は義務ではなかったうえ、整備の判断は鉄道本部長に委ねられていて、3人が危険性に関する情報に接する機会は乏しかった」と指摘しました。そのうえで、「JR西日本の管内に2000か所以上ある同じようなカーブの中から今回の場所の危険性が高いと認識できたとは認められず、ATSの整備を指示する義務があったとはいえない」として、上告を退ける決定を出しました。


107人が亡くなり、JR史上最悪となった事故は、歴代の社長の刑事責任を問えないという判断が確定することになりました。


遺族は

 事故で長女を亡くした藤崎光子さん(77)は「最高裁で真実を知りたかったが、それがかなわなくて本当に残念です。この事故は、運転士だけが原因だとは思っていません。企業としても問題があったはずで、それを裁判で明らかにしたかった。二度と悲惨な事故を起こさないためにも事故原因の解明を行ってほしい」と話しています。


 事故で長男を亡くした植木安さん(86)は「無罪になるとは思っていたが、いざ、なってみると引っかかるものがあります。社長たちは安心するだろうが、法律上のことではなく人間として反省してもらえればと思う。JRも、無罪になったからといって安心せず、これからも安全対策に力を注いでほしい」と話しています。